「海外にチャンスがある。」
それ自体は、間違いではありません。
日本のブランドにとって、海外には国内とは異なる市場があり、
ブランドによっては大きな成長機会になる可能性があります。
一方で、
「海外にチャンスがあること」と、
「今、自社が海外へ進出すべきこと」は別の話です。
海外展開を考える前に、一度確認したいことがあります。
「国内でやるべきことは残っていないか?」
「海外展開したい」が先に来ていないか
ブランドを経営していれば、
「いつか海外にも店舗を出したい」
「グローバルブランドにしたい」
と考えるのは自然なことだと思います。
実際、海外市場に可能性があるブランドも少なくありません。
ただし、海外への出店は国内出店の単純な延長ではありません。
商習慣も違えば、顧客も違う。
採用や人材マネジメントも違う。
物流、契約、税務、商品構成、価格設定など、
考えなければならないことも増えていきます。
当然、国内以上に経営・組織へ負荷がかかります。
だからこそ、
「海外に出たいか」ではなく、
「海外を運営できる状態になっているか」
から考える必要があります。
まず見るべきは、国内の出店余地
海外進出を考えるとき、
私はまず国内市場を見ます。
東京、大阪、名古屋、福岡をはじめとする主要商圏。
自社のブランドで、まだ出店できるエリアは残っていないでしょうか。
もちろん、国内すべての出店余地を完全に取り切るまで、
海外へ行ってはいけないという話ではありません。
重要なのは、
国内と海外のどちらへ経営資源を投入する方が、
今のブランドにとって合理的なのか。
という比較です。
国内にまだ有望な出店余地があり、
国内店舗の再現性も高まっているのであれば、
国内出店を続ける選択肢があります。
一方、国内での出店余地が限られてきたのであれば、
次の成長市場として海外を検討する合理性は高まります。
海外展開は憧れではなく、
ブランドの成長戦略の中で判断するものです。
海外進出の前に「店舗PL」を見る
もう一つ、重要なのが既存店舗のPLです。
新しい店舗を出すたびに利益構造が不安定になる。
店舗によって収益性に大きな差がある。
売上は伸びているものの、
値引きや人件費、在庫まで含めると利益が残らない。
こうした状態で海外店舗を増やせば、
問題はさらに複雑になります。
反対に、
「このくらいの売上なら、このくらい利益が残る」
「この店舗規模なら、この人員配置で運営できる」
「この在庫水準なら、これくらいの消化率を作れる」
といった店舗経営の基準が国内で確立されていれば、
海外へ行った際にも比較する基準を持つことができます。
海外で国内とまったく同じPLになるわけではありません。
それでも、
国内店舗の収益構造すら説明できない状態で、
より複雑な海外店舗の収益構造を管理するのは難しい。
これは海外進出を考えるうえで、
重要なチェックポイントだと思います。
店舗だけではなく、組織も海外展開に耐えられるか
そして、PLと同じくらい重要なのが組織です。
経営者が国内店舗の細かな判断まで行っている。
新店舗を出すたびに本部が混乱する。
店長によって店舗運営の品質が大きく変わる。
商品、在庫、人員などの判断基準が明文化されていない。
この状態で海外店舗が加わると、
経営者や本部の管理範囲はさらに広がります。
距離が離れるからこそ、
現地が判断できる仕組みと、
本部が状況を把握できる仕組み。
その両方が必要になります。
だから海外進出の準備とは、
海外店舗の物件を探すことだけではありません。
国内にいる間に、
経営者がすべてを直接見なくても店舗が回る状態をつくること。
これも海外展開への重要な準備です。
海外進出前に確認したい5つのこと
海外展開を検討するのであれば、
少なくとも次の5つは確認しておきたいところです。
1|国内の出店余地
まだ国内で優先すべき商圏が残っていないか。
2|既存店舗のPL
売上だけではなく、店舗として安定して利益を残せているか。
3|店舗運営の再現性
特定の店長や経営者の能力に依存せず、
一定水準で店舗を運営できるか。
4|組織
国内店舗に加えて海外店舗を管理できる人材と仕組みがあるか。
5|財務
海外事業が計画通り立ち上がらなかった場合にも、
国内事業を毀損せず挑戦を続けられる余力があるか。
この5つがすべて完璧にならなければ
海外へ行ってはいけないわけではありません。
ただ、
「海外市場が伸びているから」
「海外にも店舗があるブランドになりたいから」
だけで判断するのとは、
海外進出の意味が大きく変わります。
AceLinkならこう考える
AceLinkでは、海外展開そのものを否定的には考えていません。
むしろ、国内で一定の成長を遂げたブランドにとって、
海外は次の大きな成長機会になり得ます。
だからこそ、
海外進出を目的にしないことが重要だと考えます。
まず国内主要商圏で、
店舗として安定して利益を残せるPLをつくる。
店舗運営の基準を整え、
経営者がすべての店舗判断を直接行わなくても
事業が回る組織をつくる。
そのうえで国内の出店余地と海外市場を比較し、
次の経営資源をどこへ投じるべきか。
という順番で考える。
国内で盤石な基盤をつくることは、
海外で成功できる保証ではありません。
しかし、
より難易度の高い市場へ挑戦するための
重要な前提条件にはなります。
Today’s Action
海外展開を検討しているなら、
海外市場について調べる前に、
まず自社の国内事業を一枚の紙に整理してみてください。
・現在の店舗数
・今後出店可能な国内主要商圏
・既存店のPL
・店舗ごとの収益性
・店長/SV/本部の体制
・経営者が直接判断している業務
・海外事業へ投入できる資金と人材
これらを並べたとき、
「海外へ行くべき理由」が
どこにあるでしょうか。
最後に
海外にも展開しているブランドになりたい。
その思い自体は、
ブランドを成長させる大きな力になります。
ただ、その思いが先行していないかは、
一度確認してみてもいいかもしれません。
海外にチャンスがあるかではなく、
今の自社が、そのチャンスをものにできる状態なのか。
海外進出のタイミングは、
そこから考えてみてはいかがでしょうか。